2007年05月18日(金)<英航空機テロ未遂>国際社会への脅威、改めて見せつける
英国で10日、旅客機の同時爆破テロ未遂事件が摘発され、ロンドンのヒースロー国際空港は大混乱に陥った。事件の全容は未解明だが、国際社会がテロの脅威にさらされている現実を改めて見せつけたといえる。推測される犯人像や、テロ取り締まりの現状、バカンスシーズンを直撃した今回の事件の市民への影響を探った。【ロンドン小松浩、藤好陽太郎】
今回のテロ計画の容疑者グループの全容は明らかになっていないが、米国のチャートフ国土安全保障長官が指摘したように、国際テロ組織アルカイダが関与したとの見方が出ている。特に20人を超える規模の容疑者など犯行計画の大掛かりさが事実とすれば、長い時間をかけて準備されていた可能性がある。
アルカイダとのかかわりが指摘されるテロ未遂事件は、01年9月の米同時多発テロ後、何度かあった。欧州から米国へ向かう旅客機の爆破を計画したとして同年12月に英国人容疑者2人を逮捕▽今年2月にブッシュ米大統領が米西海岸への「テロ攻撃」阻止と発表--などだ。
一方、昨年7月のロンドン同時爆破テロのように、英国生まれのイスラム系の若者がイラク戦争で反英米意識を強め、独自に犯行計画を練っていたとも考えられる。特に英国から米国に向かう航空機が標的になったとみられることから、米英の外交姿勢への不満が動機になった公算は大きい。
イラクやアフガニスタン情勢の泥沼化、イスラエルによるレバノン攻撃強化など最近の中東情勢を巡る米英批判はむしろ強まっており、テロの脅威が今後、さらに高まることも予想される。
英国ではアルカイダなどに影響されてテロを実行する可能性がある人物が「潜在的に1200人はいる」(キングズカレッジ防衛研究センターのピーター・ニューマン所長)と言われる。昨年のロンドン・テロ以降、同じようなテロが少なくとも3件未然に阻止されたと警察当局は語る。